介護をする側の人にとって最も苦痛と感じられるのは、物理的(肉体的)な世話をすることよりも、精神的なプレッシャーを感じることの方が比重が重いのではないでしょうか。
それまで、親や家族としての尊厳を感じていた人が、徐々にではあるけれども「記憶が無くなる」「時間や場所がわからない」「夜中に歩き回る」「奇声を発する」「攻撃的になる」など、認知症の兆しをみつけると最初はどうしても驚き、悲しくなって病気のはずがないと否定してしまいたくなったり、他人に迷惑をかける行為をした際に怒ってしまったり・・・
しかし、介護申請が必要と感じられるようになるきっかけも、『認知症の兆候を感じたから』というのが少なくないと思われます。
ただし、老化による物忘れを認知症と誤解して、決め付けてしまうことも問題です。

認知症は脳の病気です

20歳代をピークに脳細胞は1日に10万個程度死滅する、と言われています。
年を取ると物忘れが多くなり「名前が出てこない」「何しにココに来たんだっけ」などなど。
これは、脳の老化の1つとして自然の事で、物忘れしている事に自分自身気づいていますし、生活上での支障も全くありません。
これに対し、病気による脳の萎縮や脳血管性障害で認知症になると、体験や出来事の記憶の全てを失い、忘れている事すら忘れています。時間や場所、計算や常識などの認識が取れなくなってきて、このため、社会生活が困難になったり、日常生活が困難になったりします。
認知症が進行すると、寝たきりや人格崩壊に繋がっていきます。


◆老化による物忘れと認知症による物忘れでは、以下のような違いがあります◆
老化による物忘れ 認知症による物忘れ
物忘れを自覚している 物忘れを自覚していない
名前や日付などとっさに思い出せない 体験した全てを忘れている
最近の出来事の記憶がない
時間や居場所が理解できる 時間や自分のいる場所が分らなくなる
幻覚や妄想は無い 幻覚や妄想を伴う場合もある
症状はほとんど進行しない 症状が進行する
日常生活に支障がない 日常生活に支障をきたし、
介護が必要になることもある
物忘れに自分で対処できる 物忘れに自分で対処できない



認知症を本人が自覚するのはなかなか難しいと思いますので、家族や周りの方が早期発見のためにも「あれっ?」と思ったら、チェックしてみましょう。
(個人差がありますので、あくまでも目安としてお使い下さい)

@ 最近の出来事を思い出せない
A 同じことを何度も言う
B 物や人の名前が出てこなくなった
C 物をどこに置いたのか忘れ、いつも探し物をしている
D 以前はあった関心や興味が失われた
E だらしなくなった
F 日課をしなくなった
G 買い物をしたときにお金の計算ができない
H 慣れた所で道に迷った
I 財布などを盗まれたと人を疑う
J ささいなことで怒りっぽくなった
K 蛇口、ガス栓の締め忘れ、火の用心ができなくなった
L 空想や作り話が多くなった
M 夜中に急に起きだして騒いだ

・・・3つ以上あてはまった場合は、専門医に相談を・・・       




認知症とは

生まれつきの支障は何もないのに、後になって脳の病気や障害が原因で物忘れがひどくなったり、いままでできていた身近なことができなくなったりする状態のことを以前は「痴呆」と呼んでいました。言葉が差別的で暗いイメージがあり、絶対治らないような感じがしたものですが、最近の医療の進歩に伴って、一部の病気は治療可能であり、また完全に治せなくてもかなりの程度症状を軽減できることがわかってきたため、表現を変えるべきだということになり、近年は公的に「認知症」という言葉を用いることになりました。


原因と分類

認知症には、脳細胞の減少が原因となるアルツハイマー病に代表される脳細胞性認知症と、長年の高血圧症や糖尿病が原因となる脳血管性認知症があります。 最近、それらに加えて髄液の吸収障害による水頭症性認知症が高齢者の間で増加しています。 この水頭症性認知症は外科的治療が可能であり、予防が可能な脳血管性認知症とともに、アルツハイマー病とは区別をする必要があります。


特徴と症状

老化現象としての物忘れは、物事の一部だけを忘れるのが特徴で、後で思い出すこともできます(良性健忘)。これに対し認知症による物忘れは体験の全体を忘れてしまい、ヒントが与えられても思い出すことができません。例えば、今朝の食事内容を覚えていないというだけでなく、朝食をとったという体験そのものを忘れてしまいます。

--- 主な症状 ---
◇ 記憶障害
・短期の記憶、長期の記憶が失われていきます。
・直前の記憶が無く、同じ事を何度も言ったり、聞いたりします。
・以前の経験や体験を忘れてしまいます。
・症状が進むと、家族の名前まで忘れてしまいます。

◇ 抽象能力や判断力の低下
・単語の意味が分からなくなってきます。
 「くだものの種類を答えて」「動物の種類を答えて」などの質問も答えられなくなります。
・手順良く計画的に行動する事ができなくなります。
・簡単な計算などもできなくなってしまいます。

◇ 不安や依存
・1人になると落ち着かなくなったり、環境が変わると落ち着かなくなったりします。
・不安な気持ちを落ち着かせるためか、人に依存する傾向も見られます。

◇ 見当識障害
・今の時間や今いる場所が分からなくなります。
・いつも通り慣れた道でもそこが何処なのか分からなくなります。
・どこにいるか分からなくなって、徘徊してしまう事もあります。

◇ 昼夜逆行
・昼寝が多くなり、夜中に行動してしまう場合があります。
・不安からか真夜中に奇声を発したり、ごそごそと動き回ったりします。

◇ 異食・過食
・食べられない物を食べたり、食事したのにさらに隠れて物を食べたりします。

◇ 攻撃的行動
・介護される事へ抵抗したり、介護者へ暴言や暴力を行ったりする場合があります。
・入浴を拒み、不衛生になる傾向もあるようです。

◇ 妄想・幻覚
・「お金を取られた」「食事をさせてくれない」などの妄想もおこります。
・見えないものが見えたり、誰もいないのに会話をしたり幻覚症状もでます。


治療

現時点では認知症の根本的な薬物治療は困難ですが、周辺症状である幻覚、妄想、いらだち、不安、うつ状態、攻撃性(暴力)、興奮などのコントロールには薬物療法が有効です。 「脳循環改善薬」「精神安定薬」「抗うつ薬」「抗不安薬」「睡眠(導入)薬」を単独、または組み合わせて使用します。しかし、高齢者では薬の副作用が現れやすく、たとえば抗うつ薬では便秘や排尿障害、口の渇きが生じたり、精神安定薬・抗不安薬・睡眠薬では、ふらつきや歩行障害により転びやすくなるなど注意が必要です。また、これらの薬も適正に使用すれば有用ですが、薬の選択や量が合わないと症状を悪化させてしまうことがあります。

病状がかなり進行していても、感情面は比較的保たれているため、人格を無視するような対応をすると感情的に不安定となり、介護が一層困難になることがあるので注意が必要です。
話を根気よく聞いてあげたり、散歩に連れて行き、昔話に付き合っているだけで、状態が落ち着くことも少なくありません。一方的に責めるのではなく、子供に対するような気持ちで接することも時には必要でしょう。





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